靴のクレームの実例と品質性能値 ウェッジヒール関連のクレーム その1 東京都皮革技術センター 台東支所 中島 健

●ウェッジヒール関連のクレーム その1

 前回は、履き心地を左右するシャンクに関わるクレームを扱った。今回はそのシャンク
が不要な形として登場したウェッジヒールに関わる事故について紹介しよう。
 ウェッジヒールはチョピンやゾッコリあるいはパッテンからヒールに移行する過渡期の形状で厚底の仲間と考えていた。

 しかし、イタリアのS. フェラガモの自叙伝1 の中で、鉄鋼シャンクが第二次世界大戦で鉄不足で入手困難になったため、シャンクの不要なデザインとしてウェッジヒールを彼自身が編み出したとしている。このことについて、米国の別の著書2 でも追認している。
この著書1 によると19 世紀末から20 世紀にかけて、チョピン・クロッグから変化したプラットフォームタイプ即ち厚底靴が全盛期を迎えていた。その流行は極端な形状となっていき、足に負担を強いていった。

 その時代を背景にフェラガモは、足に優しい履き心地を重視した軽やかな靴に仕上げて喝采を浴びていた。その人気のさなか、軽やかに作るための鋼鉄シャンクが大戦勃発で入手困難になってピンチだった。

 そこでシャンクなしでも土踏まずを保持できるウェッジヒールを開発したという。当初はおもおもしくすっきり感が無く受け入れられるのに時間を要したと言う。このときのウェッジにはコルクを用いたこともあり衝撃緩和効果や土踏まずのフィットも優れていて、次第に受け入れられて行ったと述べている。

 このウェッジヒールの靴は土踏まずの形状は着用で変形がなく長期間の良好な履き心地が保てているとして、人気が衰えない形式である。
 このヒールの特徴として歩行時に靴の土踏まずが全く曲らないことからトウスプリングを十分に設けて屈曲動作を助ける必要があることなど、技術的な工夫も重要である。

中島 健(なかじま けん)

・1939 年 東京都生まれ
・1962 年 スタンダード靴(株)入社
・1972 年 東京都立産業労働会館 技術指導研究員
・2000 年 東京都立皮革技術センター台東支所
      専門技術指導員
          現在に至る。

■バックナンバー 
閉じる