靴のクレームの実例と品質性能値 ヒールの破損 その2 東京都皮革技術センター 台東支所 中島 健

●ヒールの破損 その2

 レントゲン写真1 は技術的管理が不十分で補強パイプの周辺に気泡が発生して、補強の役割が半減しヒールが疲労破壊したものです。
 ヒール破壊問題では、ヒールが靴から外れてしまう事故も多い。写真4 では踵後方からの力でヒール釘が抜けてしまったタイプです。写真5ではどちら側の力で抜け取れたかは判別できませんがヒール釘が抜けています。

 写真6では前方からの力でヒールが取れた靴です。図4ではヒール釘の頭が中底からすり抜けてしまった事故です。

 写真4、5のように釘がヒールより抜けるようなヒール材料は釘の保持力が弱いためです。この保持力の測定では図2のように釘をヒールに打ち込み、それを引き抜いて最大の力を測定します。ISO のTノートではこのヒールピン保持力を、80N/mm以上としています。通常4ミリ程度打ち込まれますから、一本について320Nすなわち約32㎏の力でないと引き抜けません。5本で固定しますと合計で160kgの強度が得られます。

中島 健(なかじま けん)

・1939 年 東京都生まれ
・1962 年 スタンダード靴(株)入社
・1972 年 東京都立産業労働会館 技術指導研究員
・2000 年 東京都立皮革技術センター台東支所
      専門技術指導員
          現在に至る。

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