靴のクレームの実例と品質性能値 ヒールの破損 その5 東京都皮革技術センター 台東支所 中島 健

●ヒールの破損 その5

 図5 はヒール固定部分の断面図です。
 カウンターの役割は足を支持するためですが、これをしっかりと釘で中底に打ちつけると、中底を強化して変形しなくなり長い間の着用でも耐えるようになります。この釘でカシメ止めする方法は靴の内側に釘が突出したままになっていて危険な工程です。しかし、この危険をおかしてまでも形状保持のために、機械の整備や検査の充実で加工している高級品を見かけます。見えないところの数値では表せない品質です。理解しなければならない技術といえます。

 その他、ヒールの事故ではトップピースの保持部分が破壊して外れる事故が多々あります。写真9、10 ではヒール先端の樹脂部分が小さくてトップピースの足を保持できなかったためです。
 ヒールは長期間にわたって検討されてきた靴の基本構造になっていますが、ファッション的な要求はさらに技術的課題を困難にしますが、それらを解決するように努力して製造されてきています。


(参考文献)
1 Steve Rose World Footwear 11-14
2001 August
2 Keith Parker World Footwear 43-44
2002 May
3 Keith Parker World Footwear 47-50
2003 May
4 JETRO 調査レポート EU 消費財売買指令
5 A.J. Harvey Footwear materials and process
technology 1999

中島 健(なかじま けん)

・1939 年 東京都生まれ
・1962 年 スタンダード靴(株)入社
・1972 年 東京都立産業労働会館 技術指導研究員
・2000 年 東京都立皮革技術センター台東支所
      専門技術指導員
          現在に至る。

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