靴に携わるようになると、商品知識としてシャンクの重要性についての理解が求められます。靴の教科書などでは、シャンクについてヒールをしっかり保持し、足を安全に支える靴構造の要であって、バックボーンでありシャーシであるとしています。
しかし、シャンクには歩行によって予想をはるかに越える過酷なストレスが加わり、その構造のあり方や材料の選択で破壊に至ってしまうことがあります。その破壊した状況をX 線撮影した写真1、2 です。
ヒールが高くなれば成る程その強度の重要性が増すことは、前回で紹介したヒール取り付け強度に関わるクレームと同じと理解しなければ成りません。
苦情の理由
シャンクが折れたと言って苦情を訴える顧客はまず無いでしょう。消費者はシャンクの存在は知らずに、この靴を履くと疲れやすいとか、歩き難くなった或はヒールがぐらぐらしてきたなどといった漠然とした申し出です。
特に写真3 の如く、外観はそれ程の変化が無いことが多いようです。写真4 の如く、歩行中に曲がったとは考え難い破損ですが歩行中にアクシデントとシャンクの悪条件がこともあり、早期に見定めて対処することが重要です。
カウンターの付いたシューズタイプでタックス止めしたシート部であればこの破損事故はめったに起こりません。このことは前回のヒール取り付け不良の項で述べたと同じ理屈で、カウンター及び腰材料がシート部を補強して、シャンクへの負荷を減らすからです。
写真5 はしっかりとタックス止めしているカウンタータイプの靴にも関わらず、ヒールがぐらぐら動き、シャンク折れを起こしたように見られた靴のです。シャンク基点部がヒール後部まで挿入されていないためにヒール止めネジがシャンクを固定できず、シャンクとヒールの固定が十分でないために持ち込まれ
たクレームです。履き心地に関わるクレームでもあります。