完成した靴のヒール取り付けの強さを測定するのに、ISO の規格では図3 のようにヒール先端と爪先を引き離しながら荷重をかけて取り付け強さを測定します。
この方法ですと写真6 のサンダルのように前方からの力が加わったときの強さは測定しますが、後方からの力に対しての強度がわかりません。これは後方より押し込むように力を加えて測定することができないためです。
そこで片側からだけの測定で、両方向の強度を想定して規定しているわけです。この強さが如何ほどであればよいかISO の性能基準が規定されていません。
このため、多くのメーカではニュージーランドの靴研究所で発行されている出版物⑤の中に、というヒール取り付け強度について次のような記述があります。
40㎏以下 | 問題を起こす可能性多い |
40 − 50 | はっきりしないレベル |
50 − 60 | おそらく満足できる |
60 − 80 | 大抵なスタイルに十分 |
80 以上 | 余裕ある安全レベル |
と記述されています。
このことから多くの供給業者は受け入れ検査で80㎏ f(800N)以上としています。余裕ある安全レベルといっても、測定方法が着用時で加わる方向と異なることから、製造者はヒールの形状を見極めながら取り付け強度を向上させる工夫をしています。 多くの供給業者がレントゲンで全数検査をしているのもこのためです。
写真6 では中底が破壊して釘の頭が抜け出てしまった事故品です。中底もしっかりと釘を保持する能力が必要になります。釘の頭と同等の形の冶具を作って頭のすり抜けを測定します。
T ノートではヒールの高さごとに中底シートボード材料の性能を要求している。
すなわち;
(ヒール高さ) | ||
50mm 未満 | 乾燥 | 700N 以上 |
湿潤 | 600N 以上 | |
50 − 74 | 乾燥 | 900N 以上 |
湿潤 | 800N 以上 | |
75 − 99 | 乾燥 | 1100N 以上 |
湿潤 | 1000N 以上 | |
100 以上 | 乾燥 | 1300N 以上 |
湿潤 | 1200N 以上 |
としています。湿潤状態のときの値が設けられているのは着用時の汗やあめで濡れることを想定して濡れても性能が極端に悪くならない材料を使用しなければならないことを示しています。前述したヒール取り付け強度を800N 以上に性能を高めるにはヒール釘(ネジ)を打ち込むときワッシャを入れて止めることがあります。